『仮面ライダーZO』(かめんライダーゼットオー)は、1993年4月17日から東映スーパーヒーローフェアの一作として公開された劇場映画のタイトル。および、それに登場するヒーローの名称(ただし劇中での呼称としては登場しない)。
概要
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「仮面ライダー誕生20周年記念作品」であり、東映とバンダイが提携して初の作品でもある。タイトルの「ZO」は「20」に形が似ているところからつけられたと一般には理解されている[1]が、石ノ森によれば「Z」は究極、「O」は原点という意味とのこと。作品の尺の都合から、従来のライダーシリーズのような大規模な敵組織は登場せず、一人の科学者「望月博士」が作り出した生命体同士の対決が描かれている。
本作の監督を務めた雨宮慶太は、仮面ライダーをリアルタイムで視聴していたという大ファンで、企画当初は1号ライダー=本郷猛を主人公とした物語にしたいと考えていたという。諸般の事情からその考えは実現できなかったものの、本郷のように「頼りがいのあるお兄さん」のイメージとして土門廣をキャスティングしたという。また当初は「真・仮面ライダー 序章」の続編として制作される予定でもあったと言われている。
本作のポイントの一つは「原点回帰」であり、ドラスや怪人が雨宮得意の生物的なデザインになっているのに対して、ZOはシンプルなデザインになっており、必殺技もパンチとキックのみというシンプルさで、その他の武器や能力は一切持っていない(一種のESP能力は持っているが、決して戦闘用のものではない)。
また本作公開後に次の劇場用ライダー新作の企画が開始された際、雨宮は本作の続編を提案している。一緒に提出されたZOの新デザインは赤いマフラーやベルトを身に付けた、いわばZO強化案というべきものになっていた。しかし、結果的に新作は『仮面ライダーJ』となっている(なお、新デザインのZOのデザイン画は仮面ライダーJのDVDで確認できる)。
45分という尺に物語を詰め込みすぎたため、かなり展開が駆け足になってしまっているが、雨宮によると、尺が短いからこそ幕ノ内弁当のようにギッシリ詰め込みたかったそうである。
『五星戦隊ダイレンジャー』、『特捜ロボ ジャンパーソン』の劇場版と併映。配給収入は5億円。
直接制作費は3億円。この額を聞いたアメリカの映画関係者は「なんであれだけのものが、そんな低予算でつくれるんだ?」と驚いたという。
ストーリー
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望月博士に作り出された不死身の怪人ドラスは、自らの形を自由にできるネオ生命体だった。ドラスは、より完成された生物になろうと、望月博士の息子・宏を誘拐し博士に手術を迫ることを目論む。
同じく望月博士によりバッタの遺伝子を組み込む改造手術を施された博士の助手・麻生勝は、謎の声に導かれ、望月宏の身を守るため行動を開始する。
登場人物
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- 麻生勝(あそう まさる)/ 仮面ライダーZO
- 物静かな性格で元は臨床遺伝子工学の権威・望月博士の助手として完全生物の開発のための研究を手伝っていた。
- 望月博士(もちづきはかせ)
- 遺伝子工学の権威。小説版で名は「敏郎(としろう)」であると明かされている。自ら遺伝子工学研究所を構えて完全生物・ネオ生命体の開発に乗り出す。音楽を愛し、宏にその素晴らしさを伝えるなど、当初は温厚な良き父親だったが、研究が進むと次第に狂気に取りつかれ、助手である麻生さえも実験台にしてしまう。しかしその後、ネオ生命体の脅威的な成長に恐れをなして研究を中断しようとしたが、すでに自我を発現させていたネオ生命体により廃工場の機械に融合させられて自由を奪われ、更なる改造を迫られていた。
- ZOを吸収したネオ生命体によって機械から引きずり出されたが、最後の力を振り絞ってプールを破壊した。これがライダーの勝利につながったが、身体は既に機械との融合なしでは生命を維持できなくなっており、爆発する廃工場と運命を共にした。
- 島本和彦によるコミカライズ版ではより狂気が前面に出ており、ドラスがライダーに苦戦する姿にネオ生命体の要求を呑んで強化してしまう。だが、結局ネオ生命体はZOに倒され、自身の研究が間違っていた事を認め、爆発する廃工場と運命を共にした。
- 望月宏(もちづき ひろし)
- 望月博士の息子。産まれてすぐ母を亡くし、父も研究三昧の日々のため、祖父の清吉と2人暮し同然に育った。狂気に走る前の父に贈られたオルゴール時計が宝物。博士に自らの再改造を迫るネオ生命体に誘拐される。
- 廃工場で父と再会したが、ネオ生命体の脅威に晒される。しかし、持ち歩いていたオルゴールがネオ生命体の精神をかき乱し、ライダーの勝利へとつながった。
- 望月清吉(もちづき せいきち)
- 宏の祖父で、育ての親ともいえる。珍妙な二足歩行機械など、珍発明を繰り返しては失敗する物好き博士として、町の名物となっているが、その陰では密かに宏の父・望月博士の行方を追い続けている。
- 玲子(れいこ)、黒田(くろだ)、西村(にしむら)、宮崎(みやざき)
- 宏の通う武道道場の仲間たちで、玲子は師範代。家族の少ない宏にとっては、良き兄・姉役と言える。
- 島本版では玲子は麻生を鍛えるなどの重要なポジションにいた。
ネオ生命体
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望月博士によって生み出された完全生物。大規模な組織を持たず、『仮面ライダーアマゾン』のゲドンを更にコンパクトにしたかのような布陣。
- ドラス
- ネオ生命体が金属などを取り込んで作り上げた戦闘形態。
- クモ女(ドラス怪人)
- ドラスが生み出した分身。小さな蜘蛛に変身できる。長い無数の手足と怪力が自慢。暗闇に壊れた石柱が散乱しているように見える特殊な異空間を作り出す事が出来る。道場から脱出した玲子と宏を異空間に引きずりこんで襲ったが、突入してきたZOに阻まれる。そのまま戦闘に突入し、手の多さと怪力でZOを苦しめたが、手(若しくは足)の1本をもぎ取られて腹部に刺され、死亡。亡骸は小さな蜘蛛に戻った。
- ドラスやコウモリ男と違い、ストップモーションと操演のみで撮影されている。
- 島本和彦によるコミカライズ版では麻生の恋人が、小説版では宏の担任の先生がドラスの細胞で作られた蜘蛛に取り付かれ誕生した改造人間として描かれた。
- コウモリ男(ドラス怪人)
- ドラスが生み出した分身。普通の蝙蝠と変わらない大きさの個体への変身能力を有し、移動時には巨大な翼を広げて移動する。逃げ込んだ宏を追って道場を襲撃したが、ZOに苦戦し退散。直後クモ女を撃退したZO達の前に再度現れ、宏をさらおうとしたが、バイクに乗ったZOとのチェイス戦の末失敗する。その後、街中で望月博士に変身して宏をおびき出して誘拐。救助に来たZOに対し、宏に化けてだまし討ちを試みたが通用せず、パンチで腹を打ち抜かれて死亡した。
キャスト
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- 麻生勝/仮面ライターZO(声):土門廣
- 望月宏:柴田翔平
- 望月博士:佐々木功
- 望月清吉:犬塚弘
- 玲子:森永奈緒美
- 黒田:大葉健二
- 西村:山下優
- 宮崎:榊原伊織
- 仮面ライダーZO:岡元次郎
- ドラス:横山一敏、高岩成二
- コウモリ男:中川清人
- ネオ生命体:湯沢真伍
スタッフ
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- 原作:石ノ森章太郎
- 企画:村上克司、吉川進
- プロデューサー:渡辺繁、久保聡、堀長文、角田朝雄
- 製作:渡邊亮徳、山科誠
- 監督:雨宮慶太
- 脚本:杉村升
- 助監督:古庄淳一、柏渕亘、黒木浩介、松田康洋
- アクション監督:金田治(ジャパンアクションクラブ)
- 技闘補:村上潤
- 特殊効果:國米修市
- 撮影:松村文雄
- キャラクターデザイン:雨宮慶太
- キャラクター造型:レインボー造型企画
- クリーチャースーパーバイザー:竹谷隆之
- 音楽:川村栄二
- 音楽プロデューサー:峰松毅
- カースタント:タケシレーシング
- 現像:東映化学
- 協力:東京日産自動車販売、オガワモデリング
主題歌・挿入歌
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小説
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小学館スーパークエスト文庫から、射口巌によるノベライズ、「仮面ライダーZO-闇の少年-」が1993年5月に刊行された。サブタイトルのモチーフになっているドラスを初めとして登場人物の心理が映画版より細かく描写されており、他、細部の設定、並びに結末も映画版とはやや異なったものになっている。
漫画
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島本和彦版
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島本和彦によるコミカライズが、「月刊少年キャプテン」誌の1993年5月号から7月号まで掲載された。1993年に徳間書店から、島本が手がけた『イミテーション7』(『仮面ライダーBlack』および『仮面ライダーBLACK』の外伝的ストーリー)を併録した単行本が発売された。玲子の代わりとも言えるオリジナルキャラクターが登場している。
青木たかお版
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青木たかおによるコミカライズが、「てれびくん」誌の1993年2月号から11月号まで掲載された。ZOへの変身は改造ではなくウィルスによるものとなっているが、2月号から7月号までの前半はドラスとZOとの攻防となっており、細かい設定以外は映画と同じストーリーとなっている。しかし、8月号からの後半はRXこと南光太郎が先輩として登場。協力してシャドームーンに憑依したジャーク将軍と闘うオリジナルストーリーとなっている。
塚本秀一郎版
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塚本秀一郎によるコミカライズが、立風書房「仮面ライダーZO大百科」に掲載された。
『仮面ライダーBLACK』との関係
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『仮面ライダーBLACK』とは何故か、作品の内外で関係が深い。
- 映画公開前の特報映像では、BLACKのスーツがZOのシルエットとして使用されている。
- 島本和彦版では、作者の同じ『仮面ライダーBlack PART X イミテーション7』と併録された単行本が発売されている。
- 青木たかお版では、後半からRXこと南光太郎とその敵が登場している。
- 望月博士は、『仮面ライダー 蘇る仮面伝説!』では、ゴルゴムのメンバーだったとされている。
- 『仮面ライダーワールド』では、 Jとともに、『BLACK』や『RX』の敵であるシャドームーンと対決している。
- ソフビ人形のライダーヒーローシリーズでは、ドラスがシャドームーンともども敵ながら通し番号付きで発売された(後にZOとともにEX扱いとなる)。
映像ソフト化
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- VHS(セル、レンタル共通)、LD(セルのみ)がリリースされている。
- DVDは2003年12月21日発売。
その他
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- 初期のキャスティング案として、望月博士に竹中直人、清吉にいかりや長介を配するというものがあったという。
- 公開当時、メガCD用ゲームソフトが東映ビデオからリリースされた。メディアはCD-ROM。ゲームの内容は映画本編の映像を利用したリアルタイムアクション+アドベンチャーで、戦闘シーン等において画面上に表示されるサインに従いキー入力を行い、指示通りの入力をタイミングよく行えば先に進めるというもので、アーケードゲームのLDゲームと同様のゲームシステムである。ゲームの進め方によっては劇場公開作品では削除されたシーンを見る事も可能。ゲーム制作は、『忍者ハヤテ』『サンダーストームFX』『ロードブラスターFX』等、アーケード用LDゲームをメガCDでリリースしたという実績を持つウルフチームが請け負った。
- ドラスの市街地襲撃・爆破シーンは、映画「天国の大罪」で使われたオープンセットで撮影された。
- 『機動戦士Vガンダム』の前期エンディングテーマ「WINNERS FOREVER〜勝利者よ〜」は、元々本作で使用される曲として制作されたものであり、曲名は「Riders Forever」だった。諸般の事情でZO本編で使われなくなり、宙に浮いていたが、Vガンダムの総監督富野由悠季が「歌詞の内容がガンダムのテーマに合致している」と高く評価し、詞の一部を変更して使われることとなった。
- 同時期に制作された『特捜ロボジャンパーソン』と合同で主役が公募されていた。
脚注
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- ↑ しかし、石ノ森は「てれびくんデラックス 仮面ライダーZO超全集」に寄せたコメントでこの旨の発言をしている。